より効果的で結果につながる治療を行うためには、今の体の状態を正確に把握し、異常があれば適切に対応することが必要です。
正直なところタイミング法や人工授精の妊娠率はさほど高くはありません。
タイミング法の1周期あたりの妊娠率はせいぜい10%程度であり、人工授精でも数%増えるかどうかぐらいとされています(タイミング法と人工授精はほとんど差がないという意見さえあります)。
仮にタイミング法の1周期あたり妊娠率を10%とすると、それでも10回タイミングを取れば1回ぐらいは妊娠する確率です。毎月1回排卵する方の場合は毎月必ず排卵日付近でSEXをすれば1年経つ間には妊娠していてもおかしくない計算になります。タイミング法で1年以内ぐらいに妊娠できるような方はそもそも”本当の不妊症”ではないのかもしれません。
逆に毎月SEXを欠かさずやっていても妊娠しない方は”本当の不妊症”であり、タイミング法で妊娠しない特別な原因があると考えるべきです。そこで初めて不妊症の原因検索を行います。

原因が分かれば原因に応じた治療に進めばいいわけですが、原因が特定できない原因不明不妊という場合も結構あります。当院では不妊治療開始時に下記のようなスクリーニング検査を行います。これらのスクリーニング検査で異常を認めた場合は適切に対応いたします。

当院で行う検査について

子宮内膜着床能検査(ERA検査)について

子宮内膜着床能検査(ERA)は、良好胚を複数回移植しても着床しない、反復着床不全に対する検査で、着床に最適なタイミングを調べることを目的に行います。反復着床不成功例では、子宮内膜を着床可能な状態にしているつもりでも、遺伝子レベルでは準備が整っていない場合があり、結果として良好胚を何回戻しても着床しないということが起こります。
※検査周期では移植は行いません。検査だけを行います。(精密な検査結果を得るために、子宮内膜組織を採取する時期を変えての再検査が必要な場合もあります。)
ERA検査についてご希望のかたはこちらから詳細をご覧ください

子宮卵管造影(HSG)

卵管閉塞や卵管狭窄の有無を確認するための検査です。タイミング法と人工授精を希望される患者様では、これまでに他院での検査歴がない場合、過去に検査を行ったが数年以上経っている場合に必須の検査となります。体外受精、顕微授精での治療をお考えの患者様では当院では特に不要の検査となりますので、省略させていただいております。卵管造影検査は、あくまでも卵管の通過性を確認するための検査であり、卵子のピックアップが出来ているのかや、卵子と精子が出会って受精できているかが分かる検査ではありません。よって卵管造影検査で異常がないからと言って妊娠できるという保証にはなりません。

精液検査

精子の数や運動率を調べることで男性側の不妊原因の有無を確認する検査です。初診時にご夫婦でご来院された場合は、当院の採精室で採精していただき、同日中に結果を確認することができます。
(プレッシャーのために射精が難しい場合は検査容器を持ち帰り自宅で採精の上、後日ご持参いただいても構いません)精液検査はあくまでも自然妊娠の可能性があるのかを調べたり、今後の治療法を決める上での参考とする検査とご理解下さい。精液検査が大丈夫=妊娠が可能という保証にはなりません。また、精子の状態はその時々の体調でも変化しますので、1回の検査の結果が全てというわけでもありません。その時がたまたま良かった、または、たまたま悪かったということもあります。また、実際に精液所見に異常がなくても本当に卵子と受精ができているのかどうか?(精子の受精能)についてまでは精液検査では分かりません。(精子の受精能を調べるためには実際に体外受精を行って卵子と混ぜ合わせてみるしか方法がありません)

AMH(卵巣年齢検査)

AMH(卵巣年齢検査)は卵巣の状態を把握するのに必要な検査です。卵巣にどのくらいの卵子が残っているか(これを卵巣予備能と言います)が分かります。また、体外受精を行う場合にどのくらいの卵巣刺激をかけるか(排卵誘発剤の投与量や投与日数)の指標としても使います。この検査の解釈で重要なのは残存卵子数の指標にはなるが、卵子の質までは分からないということです。例えばAMHが低くても比較的年齢の若い方では数は少ないが良質の卵子が残っている可能性は十分にあるので、なるべく早く、卵子がなくなる前に有効性の高い治療を早めに行った方がよいということになります。

ホルモン検査

ホルモン検査は、排卵日を正確に予測する目的、排卵誘発剤の投与量を決める目的、採卵日決定の目的、胚移植の際のホルモン補充のコントロール確認の目的等のため当院では毎回の診察時に血液検査で確認しています。

甲状腺スクリーニング検査

古くから甲状腺機能異常(甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症)の方では不妊、流産率が高いことが報告されています。また、妊娠後の早産、妊娠高血圧症候群、常位胎盤早期剥離といった、胎児、母体ともに生命の危険にさらされる可能性の高い妊娠中の異常とも関連するとされています。
これから妊娠を希望される方、不妊治療を始められる方では、妊娠前からの甲状腺機能の厳格なコントロールを行った方が、妊娠率が高くなり、不妊治療の成績も上がり、妊娠予後もよくなると考えられます。
当院では不妊治療開始時はもちろんのこと、不妊治療中、妊娠成立後に渡って、甲状腺機能の確認を厳格に行っています。そして検査で異常が発見された方に関しては当院の不妊治療と並行して、近隣の甲状腺専門医と連携して甲状腺の治療を行うようにしています。また、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症の患者様では甲状腺機能の安定化後に妊娠に臨むことが望ましいことから、採卵前や凍結受精卵の移植前にも甲状腺機能のチェックを行うようにしており、コントロール不良の場合は無理な移植をせず、コントロールが安定化後に治療に進むようにしています。
限られた妊娠のチャンスを無駄にせず、また妊娠された方にはぜひとも元気な赤ちゃんを抱いていただきたいと考えておりますため、ご理解の程どうぞよろしくお願いいたします。

糖尿病スクリーニング検査

妊娠前から糖尿病をお持ちの患者様では、糖尿病のコントロールが良好でなければそもそも妊娠自体が許可できないということがあります。このような患者様ではそもそも不妊治療をスタートすることができません。
コントロール不良の糖尿病の状態ではそもそも妊娠自体もしにくくなるのですが、仮に妊娠した場合に胎児奇形や流産、早産の原因となったり、妊娠中の様々な合併症を引き起こし、赤ちゃんの生命だけでなく、母体の生命も危険にさらされることがあります。
また、糖尿病の基準までは達していないが、耐糖能異常といって糖尿病の予備軍のような状態の方もおられます。このような患者様では妊娠前には比較的正常に保たれていた血糖値が、妊娠を機に悪化し、妊娠糖尿病と呼ばれる妊娠中の異常を来たす可能性もあります。
当院では将来の妊娠に備えて、不妊治療開始前、および治療開始後も定期的に糖尿病のスクリーニング検査を行っています。当院で不妊治療をされる患者様には妊娠期間を安心安全にお過ごしいただき、そして元気な赤ちゃんを産んでいただきたいと考えております。ご理解の程どうぞよろしくお願いいたします。

末梢血一般検査

貧血の有無、血小板数、白血球数を確認します。特に採卵や胚移植の前には確認を行い、血小板低下による止血異常がないかなどを確認します。

凝固系検査

外科的処置(採卵)を行う場合に、出血傾向(血が固まりにくくなかなか止まらない状態)等がないかを確認するための検査です。

フェリチン

体内の貯蔵鉄量を確認するための検査です。鉄は卵子にダメージを与える活性酸素を除去する抗酸化酵素が十分に機能するために必要な材料です。鉄が不足すると卵子の染色体異常が増え、不妊や流産の原因になります。女性の場合は毎月の月経により大量の鉄が失われるために慢性的な鉄欠乏状態になっていることがよくあります。。フェリチン値が30ng/ml以下の方では妊娠しづらくなるとされています。当院ではフェリチン値50ng/ml以上を目標に不妊治療中の患者様に鉄剤の処方を行っています。また、フェリチンの数値を上げ、体内の貯蔵鉄量を効率良く増やすために鉄の吸収を促進するビタミンC、ビタミンEの錠剤も同時に処方しています。

プロラクチン

排卵障害の原因となる高プロラクチン血症の有無を確認します

感染症

B型肝炎、C型肝炎、HIV、梅毒の感染が無いか検査します

クラミジア抗体検査

クラミジア感染既往のある方では炎症によって卵管癒着、卵管閉塞、卵管狭窄などを来し不妊症の原因となります。クラミジア抗体検査は過去のクラミジア感染歴を調べる検査であり、現在クラミジアにかかっているかどうかを調べる検査ではありません。現在クラミジアにかかっていなくても、過去にかかったことがあり、その結果として卵管癒着、卵管閉塞、卵管狭窄などがある場合は不妊症の原因となり得ます。当院は過去に感染既往のある方(クラミジア抗体陽性の方)で、これまでにクラミジアに対する治療歴のない方、またはご自身とパートナーを同時に治療していない方に対しては、今現在もクラミジアが体内に潜伏している可能性を考えて、ご自身とパートナー同時に抗生物質による除菌を行う方針としています。不妊治療の方針を決める上では今現在のクラミジア感染の有無よりも過去の感染歴を重視しています。これは、今現在クラミジアがいない状態でも過去の感染によって卵管に異常を来たしている場合は自然妊娠の可能性が低くなってしまうからです。

風疹抗体検査

風疹に対する抗体(免疫)を持っているかを確認します。妊娠中の風疹感染によって、先天性風疹症候群とよばれる様々な異常を胎児に引き起こします。よって、不妊治療開始前に風疹抗体を確認し、風疹抗体価の低い方(免疫の弱い方)に対しては、将来の妊娠中の風疹感染リスクを避けるため風疹ワクチン(MRワクチン)の接種を勧めています。MRワクチン接種を行うと約2か月間避妊を行う必要があります。この2か月間の治療お休みをもったいないと考えてワクチン接種に消極的な方がおられますが、これは将来妊娠した際に赤ちゃんを危険にさらす行為になります。これから生まれてくるご自身の赤ちゃんのために、風疹抗体価の低い方は是非ワクチン接種をご検討下さい。

葉酸

妊娠前から葉酸摂取量が足りているかを確認します。妊娠前からの葉酸摂取量の不足は胎児の二分脊椎や神経管閉鎖異常などの胎児奇形をきたす可能性が高くなります。

EMMA検査、ALICE検査


当院では、従来のERA検査に加えて、EMMA検査、ALICE検査を導入しました。これまでのERAと同一周期、同一検体で実施が可能となり、1回の検査で、ERA+EMMA+ALICEが同時に実施可能です。これまで流産を繰り返されている方、体外受精の胚移植反復不成功の方、流早産既往のある方は、ぜひご検討下さい。




EMMA~エマ~(子宮内マイクロバイオーム検査)とは?


EMMA(Endometrial Microbiome Metagenomic Analysis)~エマ~検査とは“子宮内膜マイクロバイオーム検査”と呼ばれるもので、子宮内の細菌叢をみる検査です。最近の研究では、子宮内腔の細菌叢のバランスが崩れると、妊娠率や出産率が低下、またARTの治療成績不良にも関連すると言われています。特に、乳酸桿菌ラクトバチルスレベルの低下が、不妊症の一因となっていることが示唆されています (Moreno et al. Am J Obstet Gynecol, 2016) 。


EMMA検査・ALICE検査

EMMA(子宮内膜マイクロバイオーム)検査では子宮内膜の細菌の種類と量を調べ、子宮の細菌環境が胚移植に最適な状態であるかどうかを判定することができます。子宮内の乳酸菌割合を上げると着床・妊娠率が上昇します。



EMMA検査の目的



  • 子宮内膜の細菌の種類と量を測定し、バランスが正常かどうかを調べられます。

  • 子宮内膜の乳酸菌の割合は着床・妊娠率に大きく関わります。

  • 子宮内環境を改善する(乳酸菌の割合を上げる)事により、着床・妊娠率が向上します。




このような方へお勧めの検査です。



  • 着床しやすい子宮内環境を整えておきたい方

  • 今後の治療プロセスで、自分の子宮内膜の状況を調べておきたい方

  • 乳酸菌が優位でない場合には、適切な治療の提案がされます。






ALICE~アリス~(感染性慢性子宮内膜炎検査)とは?


ALICE(Analysis of Infectious Chronic Endometritis)~アリス~検査とは“感染性慢性子宮内膜炎検査”で、子宮内の細菌の中で特に慢性子宮内膜炎(CE)の原因となる細菌を検出します。CEは不妊症女性の約30%に見られ、習慣性流産(いわゆる不育症)を引き起こしている患者に関してはその数は60%に及ぶとも言われています。慢性子宮内膜炎(CE)では、細菌が子宮の基底層にまで入りこんで慢性的な感染、炎症が起こっています。基底層は月経ではがれない部分のため、自然に治ることはないとされています。この検査では微生物学的レベルで子宮内膜を評価し、慢性子宮内膜炎の患者様の妊娠成績、生産率向上を目指します。



ALICE検査の目的



  • 慢性子宮内膜炎は細菌感染によって起こり、不妊症・不育症の原因の1つになることから、原因を追求します。

  • ALICE検査では、従来の方法では特定できなかった慢性子宮内膜炎の病原菌を検出できます。
    ※慢性子宮内膜炎は不妊症患者の約30%、習慣流産(不育症)や着床不全患者では約66%が罹患していると言われています。




このような方へお勧めの検査です。



  • 体外受精をしたが、なかなか着床しない、または早期流産を経験された方

  • 慢性子宮内膜炎と診断されて、適切な治療をしたい方

  • ALICE検査では、検出された病原菌に対する治療に必要な抗生物質やプロバイオティクスが提案されます。






EMMA検査、ALICE検査の料金



ERA単独(当院おかかりの方)

132,000円(税込)

ERA単独(当院以外の方)

159,500円(税込)

ERA+EMMA+ALICE

165,000円(税込)

EMMA+ALICE

66,000円(税込)

ALICE単独

49,500円(税込)


※上記にエコー検査代、薬剤費、再診料等が別途かかります。正確な検査を行うために2周期目の検査を実施する場合があります。その際も同一料金となります。




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